【オンライン通訳】

この10日間で合計7件・12時間の通訳案件を終了した。
このご時世なので当然、全てオンライン。

さて、対面での通訳とオンライン通訳とでは実際、何が違うのか?

私自身が通訳をする際に、常に気を付けていることは
「話し手の『感情』を聞き漏らさない・伝え漏らさない」こと。

極端なことを言えば、『言葉』は漏れて良い。
言葉の変換だけなら、できる人は多数いる。

そうではなく、話し手の思惑を汲み、目標達成のお手伝いをすることが
通訳・そして交渉代理人の仕事である。

これが何を意味するか?

例えば、私は元々、同時通訳の案件はお断りしている。
同時通訳では、聞こえる言葉を数単語〜フレーズレベルで他言語に変換していきながら進行する。
聴きながら、脳内変換し、話す…のループだ。

私のように文章をまとめて聞き取り、イントネーションや表情から本心を探り、
今後の交渉内容によっては切り札として活用しよう…と思うと、同時通訳の手法では難しい。

さらに、対面通訳の場合、私はメモを取らない。
書くのが遅いという理由もあるが、
メモを取るために下を見ると、話し手の表情や感情が読み取れないからである。

特に私の通訳手法が
『イメージング(聴いた言葉を脳内に絵として展開・一時保存し、その絵の描写を別の言語で行う)』
であるため、
メモという視覚情報につられると話せなくなるという理由もある。

文字通りの翻訳をベースにした通訳というものは、聞き手には非常に理解しにくい。
発せられた言葉を聞き手ができる限りわかりやすい表現法で伝えることも、
私の役割であると考えているのだ。

オンライン通訳ではこの辺りの勝手が大きく違ってくる。

数単語・フレーズ毎に通訳をしていると感情が正確に伝えられないため、
やはり同時通訳はしない。
そこは同じなのだが、オンライン通訳の場合は、
話し手の表情を見ながらメモを取ることができる。

ディクテーションができるレベルのタイピングスピードがあれば、
聞き取った単語全てをメモすることすらできる。
それにより、話し手を遮らなくても一回一回により多くの情報を込めることができるようになった。

忘れる事項も少ないし、書き留めた言葉を脳内変換していく作業になるので、
脳の疲れる場所と疲れるスピードが違う。

私の場合は、対面通訳よりもオンラインの方が若干、脳が疲れてくるまでの時間が長かった。
特にセミナーやプレゼンテーションにおいては、対面よりも良い環境と言える。

だが、交渉や商談時にはそうも行かない。

メモを取ることで、文字通りの翻訳文を通訳として話してしまうことがある。
メモした言葉全てを伝えようとしてしまい、会話ではなく伝言になってしまうのだ。
イメージングを使わない通訳では、
伝えたつもりのコンセプトがしっかりと伝わっていない場合がある。
必要なアドリブ力に欠けているということだ。

また、メモの文字という視覚情報につられるデメリットもある。
例えば、『Southeast Asia』と書いたメモを見て通訳をする際に、
まず脳内に『南』が出てしまい、『東南アジア』がしばらく出て来ないという事態になる。

このように、対面・オンラインともにメリット・デメリットがある。
これらを踏まえて、今後は仕事の種類に合わせて形式が選べるような環境を作って行きたいと思う。

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